全国598の自治体と協働してきた動物愛護団体
「猫を外来種対策の対象とすること自体が誤り」と訴え
公益財団法人どうぶつ基金(所在地:兵庫県芦屋市/理事長:佐上邦久)は、環境省が進める「生態系被害防止外来種リスト」の見直しにおいて、イエネコ(飼い猫・野良猫)を「防除推進外来種」に位置づける方向で検討していることに対し、2026年7月4日、Change.orgでオンライン署名活動を開始し、7月6日、環境大臣宛ての要望書を提出いたしました。「防除」とは、取り除くことを意味します。どうぶつ基金は、猫を外来種対策の枠組みで「念のため駆除」の対象と位置づけること自体が、科学的にも制度的にも誤りであると考えています。
本件は、猫の適正飼養や希少種保全の重要性を否定するものではありません。どうぶつ基金は、屋内飼育の推進、TNR、地域猫活動、不妊手術、飼い主責任の徹底など、人道的かつ科学的な個体数管理を進めるべきであり、猫を「外来種対策」の枠組みで扱うことに強く反対しています。
いま、環境省で何が検討されているのか

複数の報道によれば、環境省は約10年ぶりとなる「生態系被害防止外来種リスト」の見直しにおいて、これまで野生化した「ノネコ」に限られていた対象を、野良猫・飼い猫を含む「イエネコ」に広げ、「防除推進外来種」に位置づける方向で最終調整しているとされています。どうぶつ基金が環境省に確認したところ、同省は現在、この方針について最終的な詰めの段階にあるとのことです。国民が意見を提出できるパブリックコメントは、令和8年4月2日から5月1日まで実施され、すでに終了しています。正式な決定・公表が目前に迫るなか、6月末の報道以降、この問題に対する社会的な関心が急速に高まっています。
こうした状況を受け、どうぶつ基金は、決定が確定する前に反対の声を届けるため、Change.orgでの署名活動を開始し、環境大臣宛ての要望書を提出することを決定いたしました。
事実関係の確認:「特定外来生物」に指定されるわけではありません
本件で対象となっている「生態系被害防止外来種リスト」は、外来種への理解を広げ、適切な行動を呼びかけるための行政上のリストです。そのため、このリスト自体に法的拘束力や罰則はありません。また、猫がブラックバス等のような「特定外来生物」(外来生物法)に指定されるわけでもありません。
どうぶつ基金は、この点を正確に踏まえたうえで、なお、イエネコ(飼い猫・野良猫)を「防除推進外来種」として扱うことに反対しています。
要望書に記した4つの要望
どうぶつ基金は、環境大臣宛てに提出した要望書において、主に以下の4点を求めています。
1. イエネコを「防除推進外来種」として扱うことを中止すること
飼い猫・野良猫を含むイエネコを、「防除推進外来種」として扱うことの中止を求めます。
2. ネコを「防除推進外来種」から削除する方針に賛同すること
仮に、科学的根拠とエビデンスによって、イエネコが在来種を絶滅に追い込む危険が証明され、猫への対応がどうしても必要となる場合であっても、駆除ではなく、人道的・科学的手法による対応を求めます。これは、希少種保全を放棄するものではありません。
3. 猫の飼養・個体数管理は、動物愛護管理法に基づいて行うこと
猫の飼養や個体数管理は、外来種対策ではなく、動物愛護管理法に基づく適正飼養、TNR、地域猫活動などの人道的手法で行うべきです。また、屋外の猫、地域猫、TNR、給餌活動の制限や、関係者への不当な圧力を行わないことを求めます。
4. 動物愛護の専門的知見と当事者を交えて、改めて検討すること
猫の取扱いに関わる判断は、動物愛護の専門的知見を持つ関係者や、実際に地域で猫問題に取り組んできた当事者を加えた構成のもとで、改めて検討する必要があります。
どうぶつ基金が反対する主な理由
どうぶつ基金は、要望書の中で、すべて一次情報に基づき、以下の理由からイエネコの「防除推進外来種」指定に反対しています。
本土で猫が生態系を脅かした科学的根拠は確認できない
環境省のレッドリストにおいて、飼い猫・野良猫が単独の原因で在来種を絶滅させたとする記載は、一例も確認できません。どうぶつ基金は、全国のイエネコを「防除推進外来種」として扱うには、科学的根拠と十分なエビデンスが必要であると考えています。
奄美のアマミノクロウサギの回復は、ノネコ駆除だけでは説明されていない
アマミノクロウサギの回復に関しては、主な要因としてマングースの防除が挙げられています。どうぶつ基金は、奄美の事例をもって、全国のイエネコを一律に「防除推進外来種」として扱う根拠にすることは適切ではないと考えています。
IUCNの高リスク評価は「捕食者不在の海洋島」が前提
IUCN Global Invasive Species Databaseにおけるイエネコの高リスク評価は、ハワイなどの「捕食者不在の海洋島」を前提としたものです。一方、奄美・沖縄には在来の捕食者が存在しており、前提条件が異なります。どうぶつ基金は、海外の海洋島の評価をそのまま日本全国のイエネコに当てはめることは慎重であるべきと考えています。
検討会の委員自身も「対策=駆除という考えは古い」と述べている
第5回検討会の議事概要では、掲載を推進する委員でさえ「対策=駆除という考えは古い」と述べています。
この発言からも、猫への対応は駆除ではなく、適正飼養、人の管理、TNR、地域猫活動などを軸に進めるべきであることが示されています。
国際基準も、駆除ではなくTNR等の人道的管理を推奨
ICAM「Humane Cat Population Management Guidance」でも、猫の個体数管理については、駆除ではなく、TNRなどの人道的管理が推奨されています。どうぶつ基金は、国際的な基準に照らしても、猫を「防除推進外来種」として扱うのではなく、動物福祉に配慮した管理を行うべきと考えています。
猫の飼い方は動物愛護管理法の領域
猫の飼い方や個体数管理は、外来種対策ではなく、動物愛護管理法に基づく適正飼養の領域です。屋内飼育の推進、不妊去勢手術、TNR、地域猫活動、多頭飼育崩壊への対応などは、これまでも動物愛護管理行政の枠組みで進められてきました。
検討会の構成に、動物愛護行政や動物保護・愛護団体が含まれていない
今回の判断に関わる検討会の構成員には、動物愛護行政を担う環境省動物愛護管理室や、動物保護・愛護団体が含まれていません。どうぶつ基金は、猫の取扱いに関わる重要な判断である以上、動物愛護の専門的知見と、現場で猫問題に取り組んできた当事者を交えた再検討が必要であると考えています。
法的拘束力のないリストなのに、なぜ問題なのか
「生態系被害防止外来種リスト」自体には、罰則はありません。しかし、「防除推進外来種」とは、その名称のとおり、野外の個体群について「防除=取り除くこと」の推進を国が方向づける区分です。しかも本件は、沖縄など特定地域に限らず、全国のイエネコ(飼い猫・野良猫)を対象とするものです。
「飼い猫は対象外」と説明される場合であっても、その除外は「屋内で適切に飼育されていること」が条件となります。そのため、家と外を行き来する外飼いの猫は、対象に含まれる可能性があります。
ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査によれば、飼い猫は約885万頭とされています。報道では、対象の背景として「屋外で餌付けされた猫などが希少動物を捕食していること」が挙げられており、環境省が「家の中の猫は対象外」と説明することは、裏を返せば「外に出る猫は対象」ということになります。
実際、第5回検討会の議事概要では、種名掲載を推進する委員自身が「猫問題の主役は野良猫だ」「野良猫を除外してしまっては実効性が失われる」と述べ、対象が町の野良猫であることを明言しています。
屋外の猫は、飼い主のいる猫、地域猫、野良猫の見分けがつきにくく、全国どこでも一律に対象とされる懸念があります。
なお、当該リストの正式名称は「我が国の生態系等に被害を及ぼす“おそれ”のある外来種リスト」です。つまり、被害が生じる前の段階から、防除の対象としうる枠組みです。
また、法的拘束力のある「特定外来生物」では、ある生物が「防除すべき外来種」と位置づけられた後、条例によるリリース禁止や回収、集中的な駆除、罰則といった措置が段階的に積み重なってきた事例があります。滋賀県の外来魚対策や、奄美でのマングース根絶などがその例です。
どうぶつ基金は、諮問的なリストへの掲載であっても、それが屋外の猫、給餌活動、地域猫活動への圧力や、将来の措置の起点となりうることを懸念しています。
「防除は駆除に限らず、保護やTNRも含む」と説明される場合があります。しかし、それでもなお、「取り除くこと」を前面に出す「防除推進」の区分で猫を扱う必要はありません。
真に適正飼養やTNRを目指すのであれば、外来種対策ではなく、動物愛護管理法の枠組みで行うべきです。
Change.orgで署名活動を開始

どうぶつ基金は、Change.orgでオンライン署名活動を開始しました。集まった声は、環境大臣宛ての要望書とともに、環境省への働きかけに活用いたします。
署名ページ
イエネコを「防除推進外来種」にしないよう、環境大臣に求めます
要望書全文
生態系被害防止外来種リストの見直しにおけるイエネコの取扱いに関する要望書
代表コメント:理事長・佐上邦久
夕方、帰宅すると玄関で待っている猫。夜明けに、名前をつけた地域の猫たちへそっとごはんを置く人。耳の先を桜の花びらのように切った『さくらねこ』――。
私たちが全国の自治体や地域の方々と、長い時間をかけて守ってきたのは、そうした一つひとつの、かけがえのない命です。 私たちは、屋内飼育の大切さも、殺処分ゼロも、行政とともに訴え続けてきました。その同じ国が、外に生きる猫を「念のため駆除」の対象と呼ぼうとしている。この現実に、黙っているわけにはいきません。 猫の運命が、猫をいちばんよく知る当事者を交えないまま決められようとしている今、どうか、猫を想う多くの方の力を貸してください。
公益財団法人どうぶつ基金 理事長・佐上 邦久
公益財団法人どうぶつ基金について

公益財団法人どうぶつ基金は、1988年の創設以来、一貫して猫をはじめとする動物の福祉と適正管理に取り組んでいます。全国598の自治体(行政)と協働して「さくらねこ無料不妊手術事業(TNR)」を実施し、これまでに44万頭を超える、累計441,876頭の野良猫・多頭飼育崩壊の猫に無料で不妊手術を行ってきました。
環境省とも動物愛護管理の分野で連携し、これまでに35を超える自治体から表彰状・感謝状を受けています。
組織概要
名称:公益財団法人どうぶつ基金(Animal Action Fund)
住所:兵庫県芦屋市奥池南町71-7
設立:1988年6月
理事長:佐上 邦久
公式サイト:https://www.doubutukikin.or.jp
参考・出典一覧
- 生態系被害防止外来種リスト(諮問的・法的拘束力なし)
- 報道(共同通信/Yahoo!ニュース)
- 検討会(第5回)議事概要
- 検討会の開催について(「生物学等の専門有識者」)
- 検討会 構成員名簿
- 環境省 レッドリスト・レッドデータブック
- 環境省 奄美大島マングース根絶の宣言
- IUCN Global Invasive Species Database(Felis catus)
- ICAM「Humane Cat Population Management Guidance」
- 環境省 住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン
- 環境省 多頭飼育対策ガイドライン
- 環境省 虐待や遺棄の禁止(動物愛護管理法)
- e-Gov 動物の愛護及び管理に関する法律
- ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査
- 滋賀県 外来魚駆除対策事業
- 環境省 外来生物法に関するQ&A(規制・罰則)
記事要約(Summary)
公益財団法人どうぶつ基金は、環境省が「生態系被害防止外来種リスト」の見直しで、イエネコ(飼い猫・野良猫)を「防除推進外来種」に位置づける方向で検討していることに反対し、Change.orgで署名活動を開始しました。あわせて、2026年7月6日に環境大臣宛ての要望書を提出しています。どうぶつ基金は、本リストに法的拘束力や罰則がなく、猫が「特定外来生物」に指定されるものではないことを踏まえたうえで、なお、猫を外来種対策の枠組みで「防除」の対象とすることは科学的にも制度的にも誤りであると主張しています。
同団体は、猫の飼養・個体数管理について、外来種対策ではなく、動物愛護管理法に基づく適正飼養、TNR、地域猫活動、不妊手術などの人道的・科学的手法で進めるべきだと訴えています。また、猫の取扱いに関わる判断には、動物愛護の専門的知見を持つ関係者や、実際に地域で猫問題に取り組んできた当事者を加えて、改めて検討することを求めています。
■プレスリリース配信元-公益財団法人どうぶつ基金
























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