日本マイクロソフト株式会社は2026年9月7日、警察庁と「官民連携によるサイバー事案対策の推進に関する協定」を締結したと発表した。高度化・複雑化・国際化するサイバー犯罪への対応を強化するため、両者が継続的に連携し、サイバー事案の未然防止や被害拡大防止、捜査に役立つ情報共有に加え、子どもや若年層を対象としたサイバーセキュリティ教育・啓発活動にも共同で取り組む。
マイクロソフトが持つ世界規模のサイバー脅威情報や技術力と、警察庁の捜査・犯罪対策に関する知見を組み合わせることで、日本国内のサイバー空間における安全性向上を目指す。
警察庁と日本マイクロソフトがサイバー犯罪対策で協力
今回締結された協定では、警察庁と日本マイクロソフトがサイバー事案対策について相互に協力し、継続的な連携体制を構築することが定められている。
主な連携事項は以下の3点。
- サイバー事案の未然防止、被害拡大防止および捜査に資する情報の共有
- 次世代向け教育など、サイバー事案対策に関する啓発活動
- その他、警察庁と日本マイクロソフトが必要と認めた事項
具体的な取り組み内容や実施体制、方法などについては、両者が協議した上で個別に定める。また、必要に応じて自治体や教育機関、民間企業、その他の関係機関との連携も進める方針だ。
国境を越えるサイバー犯罪に官民連携で対応
近年、ランサムウェアやフィッシング、サポート詐欺、情報窃取型マルウェアなど、サイバー犯罪は国境を越えて展開されるケースが増えている。マイクロソフトはこれまでも、日本を含む各国の法執行機関と連携し、サイバー犯罪への対策を進めてきた。2025年には、日本の高齢者を狙ったサポート詐欺に関する情報を分析し、警察庁とインド警察による国際共同捜査を支援。インドを拠点とする詐欺グループの摘発につながったという。
さらに2026年6月には、欧州連合法執行協力庁(Europol、ユーロポール)と協力し、2つのサイバー犯罪ツールが利用していた共通サーバー設備を特定。犯罪インフラの無力化を支援した。
今回の協定によって、こうしたグローバルなサイバー犯罪対策で培われた知見を、日本国内の捜査や被害防止にもより直接的に生かせる体制が整うことになる。
世界規模のサイバー脅威情報を警察庁との連携に活用
マイクロソフトは、世界各国で展開するクラウドサービスやセキュリティ製品などを通じ、大規模なサイバー脅威情報を収集・分析している。今回の協定では、こうした情報網や技術的知見を活用し、サイバー犯罪の兆候把握や被害拡大防止、捜査支援につながる情報共有を進める。
サイバー犯罪では、攻撃者が海外のサーバーや複数のクラウドサービス、暗号化通信などを組み合わせるケースも多く、一つの組織だけで全容を把握することが難しい。そのため、政府機関とグローバルIT企業が連携し、それぞれが持つ情報や専門知識を共有する官民連携の重要性が高まっている。
「Minecraft Education」をサイバー防犯教育に活用
今回の協定では、捜査や脅威情報共有だけでなく、次世代を対象としたサイバーセキュリティ教育にも重点が置かれている。日本マイクロソフトは、小学生・中学生・高校生などを対象とした「サイバー防犯ボランティア」をはじめとする啓発活動に対し、「Minecraft Education」の教材を提供する。ゲーム型の学習環境を活用しながら、インターネット上の危険やサイバー犯罪、セキュリティ対策について実践的に学べる機会を提供する。
若年層がインターネットやSNS、オンラインゲームなどを日常的に利用する現在、フィッシング詐欺やアカウント乗っ取り、不正アクセスなどから自らを守るための知識を早い段階から身につけることが重要になっている。
今回の取り組みは、将来的なサイバー犯罪被害の抑止という観点でも注目される。
警察庁「グローバルな官民連携が必須」
警察庁サイバー警察局長の逢阪貴士氏は、昨今のサイバー空間における脅威について、高度化、複雑化、国際化が進んでいると指摘。今回の協定を基盤として、警察とマイクロソフトがそれぞれの強みを生かして協力することで、安全・安心なサイバー空間の実現に向けて前進できるとの考えを示した。
一方、マイクロソフト アジア共同プレジデントで日本マイクロソフト代表取締役社長の津坂美樹氏は、国境を越えて広がるサイバー脅威への対応には、国家機関レベルで協力できるパートナーが不可欠だと説明。
警察庁との協力関係をさらに深め、各国の法執行機関との連携で培った知見や世界規模の脅威情報を活用し、日本の利用者が安心してインターネットを利用できる社会づくりに貢献するとしている。
協定の有効期間は2027年9月6日まで
「官民連携によるサイバー事案対策の推進に関する協定」の有効期間は、締結日の2026年9月7日から2027年9月6日まで。ただし、有効期間満了日の1カ月前までに警察庁または日本マイクロソフトのいずれからも変更・解除の申し出がない場合は、同一内容で1年間更新され、その後も同様に更新される。協定ではこのほか、経費負担、秘密情報の取り扱い、協定内容の変更、解除条件、免責などについても定められている。
特に情報共有を伴う協定であることから、相手方から秘密であることを明示して開示された情報については、原則として協定の目的以外への利用や第三者への開示を禁止する守秘義務規定も盛り込まれた。
官民連携によるサイバーセキュリティ対策がさらに重要に
企業や行政機関、個人を狙ったサイバー攻撃が国際的に拡大するなか、政府機関だけでなく、世界規模のインフラやセキュリティ情報を保有する民間IT企業との協力は、今後さらに重要になるとみられる。今回の警察庁と日本マイクロソフトによる協定は、犯罪発生後の捜査支援にとどまらず、脅威情報の共有による未然防止や被害拡大防止、さらに子どもたちへのサイバー教育まで対象としている点が特徴だ。
グローバルな脅威情報と国内の捜査・防犯体制を組み合わせることで、日本におけるサイバー犯罪対策の強化につながるか、今後の具体的な取り組みが注目される。
記事要約(Summary)
警察庁と日本マイクロソフト株式会社は2026年9月7日、「官民連携によるサイバー事案対策の推進に関する協定」を締結した。協定では、サイバー犯罪の未然防止や被害拡大防止、捜査に役立つ情報共有に加え、小中高生などを対象としたサイバーセキュリティ教育・啓発活動で連携する。日本マイクロソフトは、各国の法執行機関との協力で培った知見や世界規模のサイバー脅威情報を活用するとともに、「Minecraft Education」の教材提供などを通じて次世代向けの防犯教育も支援する。協定の有効期間は2027年9月6日までで、特段の申し出がなければ1年ごとに更新される。国際化するサイバー犯罪に対し、警察とグローバルIT企業が官民一体で対応する取り組みとして注目される。
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