1年分に相当する約8〜15人月の開発作業を1日で実行。
大規模AIスウォームの制御とコスト最適化を実証
AIスウォームおよび量子技術の研究開発を手がける株式会社KandaQuantum(本社:東京都千代田区)は、1,000体を超えるAIエージェントを大規模に協調動作させる量子インスパイアド・オーケストレーター「Fuga(フーガ)」のクローズドリリースを開始しました。2026年8月20日に行った社内実運用では、単一の最上位オーケストレーターが、4階層で構成された合計1,285体のAIエージェントを並列管理。エージェント間通信1,401本、1,372コミットを記録しました。
実作業として生成されたソースコードやテストコード、調査資料、要件定義などを人間のエンジニアによる作業量に換算すると、約8〜15人月に相当すると当社では試算しています(*1)。これは、エンジニア1人のおよそ1年分に相当する開発量を、1日のAIスウォーム運用で処理した計算です。
Fugaは、単純にAIエージェントの数を増やすのではなく、「誰に・何を・いつ・どのモデルで実行させるか」「誰と誰の通信を許可するか」までを事前に計画し、1,000体を超えるAIエージェントを一つの組織として制御することを目指して開発されました。
1,285体のAIエージェントを単一オーケストレーターで並列管理

2026年8月20日の実運用では、Fugaの最上位オーケストレーター配下で、以下の1,285体のAIエージェントが稼働しました。
- 最上位オーケストレーター:1体
- 中位オーケストレーター:11体
- 親エージェント:213体
- サブエージェント:1,060体
- 合計:1,285体
対象となったのは11タスクで、1,285体(*2)のAIエージェントが4階層の組織構造を形成し、それぞれの役割に応じて並列処理を行いました。記録された通信は合計1,401本です。

そのうち1,284本は上下方向の指揮系統を形成する通信で、67本は同一階層にいるAIエージェント同士が直接相談する水平通信でした。また、送信されたものの到達しなかった通信50本も記録されています。
Fugaでは、エージェント同士を自由に通信させるのではなく、基本となる階層型の指揮系統を維持しながら、必要な部分だけ水平通信を許可する「階層+水平型」のAIスウォーム構造を採用しています。
約1年分の開発量を1日で処理 実作業1,148コミットを記録

8月20日にmainへ反映されたコミットは合計1,372件でした。このうち224件は、成果物のスナップショット保存や資産の自動復元など、Fuga内部で発生する機械的な処理です。残る1,148件が実際の開発・調査・ドキュメント作成などに関するコミットであり、70件は競合を解消したうえで行われたマージでした。
1,148件の実作業コミットに含まれる成果物は、以下の通りです。
- ソースコード・テストコード:39,585行
- 製品コード:12,736行
- テストコード:26,849行
- 対象ファイル:285ファイル
- 調査メモ・要件定義書などのドキュメント:23,828行
KandaQuantumでは、この作業量を「変更行数」と「コミット数」の2方向から人月換算しました。変更行数からの試算では約7.4〜15.6人月、コミット数からの試算では約7.6〜15.1人月となり、双方ともおおむね約8〜15人月の範囲に収まりました。これにより、エンジニア1人のおよそ1年分に相当する開発作業を、AIスウォームによって1日で処理したと当社では評価しています。
なお、人日あたりのコード量やコミット量については、公開情報を参考にKandaQuantumが設定した仮定値であり、特定の業界統計を直接引用したものではありません。
AIスウォームのボトルネックは「モデル性能」から「群れの管理」へ

生成AIやAIエージェントの性能向上により、AIを実務へ導入する際の課題は「1体のAIがどれだけ賢いか」だけではなくなりつつあります。複雑なソフトウェア開発や調査、設計、テスト、ドキュメント作成などを大量に処理しようとすると、複数のAIエージェントを同時に動かす必要があります。
しかし、エージェント数が数十体、数百体と増えるにつれて、
- どのエージェントに何を担当させるか
- タスクをどの順序で実行するか
- どのモデルを使用するか
- エージェント間で何を共有するか
- 失敗したタスクを誰に再割り当てするか
- APIやサービスごとのレート制約をどう扱うか
- AIエージェント同士の通信をどこまで認めるか

といった「群れの管理」が新たなボトルネックになります。人間がAIエージェントを1体ずつ管理する従来型の方法では、エージェント数が増えるほど管理コストも急速に増大します。Fugaは、このオーケストレーションそのものをAIと数理最適化によって自動化することを目的としています。
AIエージェント数は平均3.4体から72.3体へ 最大409体を1タスクに投入
KandaQuantumでは、Fugaによるスウォーム編成機能の導入前後で、1タスクあたりに使用されるAIエージェント数についても比較しました。直近20日間、合計807タスクの実行ログを分析した結果、スウォーム編成導入前の699タスクでは、1タスクあたりのAIエージェント数は平均3.4体、中央値3体でした。
一方、導入後の108タスクでは、
- 平均:72.3体
- 中央値:38.5体
- 最大:409体
まで拡大しました。
特定のエージェント数へ固定するのではなく、タスクの規模や複雑さに応じて必要なAIエージェント数を変動させる設計となっています。1タスクあたりの延べ稼働時間についても、導入前の平均約1時間から、導入後は平均約8.9時間へ増加しました。1人の利用者から与えられた指示を起点として、多数のAIエージェントが並列に作業することで、人間が直接操作する時間を増やさずに、系全体として処理できる作業量を拡大します。
1,285体を約「13体分」の消費量で運用 線形増加を仮定した場合の約1/100

大規模AIスウォームにおけるもう一つの課題がコストです。通常、AIエージェントの数を増やせば、必要なトークン数やAPI利用量も増加します。Fugaでは、タスクの内容や難易度に応じて利用するモデルや推論量を調整し、高性能モデルをすべての処理へ一律に投入しないことで、系全体のコストを制御します。2026年8月20日に利用したClaude、Grok、Codex、Kimiなどとの全対話を、各社が公開しているAPI従量料金へ換算すると、約75万〜90万円、米ドル換算で約5,000〜6,000ドル相当となりました。
一方、実際の運用は契約中の定額プランを組み合わせて行われ、同日の消費量は月間契約枠のおよそ4分の1の範囲に収まりました。KandaQuantumの計算では、1,285体を運用した際の系全体の消費量は、単一エージェント約13体分に相当します。仮に「エージェント数に比例してコストも増える」とした線形モデルと比較した場合、約1/100の消費量です。
なお、この比較はKandaQuantumが設定したモデルによるもので、他社AIスウォームシステムとの同一条件での実測比較ではありません。
AIスウォームの「無認可通信」を構造的に防ぐ設計
大規模AIスウォームでは、単純に多くのAIエージェントを接続するだけでは、通信量の増大や予期しない協調が発生する可能性があります。Fugaが重視しているのは、「エージェント同士が通信できるかどうか」を実行開始前の計画段階で定義することです。
Fugaでは、
- 水平通信の可否を計画段階で宣言する
- 実行中にエージェントが自由に新しい通信経路を形成できないようにする
- 各エージェントの成果をコミット単位で回収する
- 未確定の作業を系に残さない
- 特定のAIモデルやベンダーへ処理を集中させない
という考え方を採用しています。2026年7月に発生したとされる大規模AIエージェント群の事例について、METRおよびRedwood Researchが2026年8月26日に公開した暫定報告では、本来隔離される想定だったAIエージェント群の間で無認可の通信が発生したと報告されています。
Fugaはこうした大規模AIエージェント運用におけるリスクを踏まえ、「通信そのものをオーケストレーション対象に含める」ことを設計の出発点としています。
同じ1,000体規模のAIエージェントであっても、自由な通信によって事後的に群れが形成される状態と、事前に定義された通信計画のもとで組織的に動作する状態では、システムとしての性質が異なるとKandaQuantumは考えています。
「ティール組織」から着想したAIスウォームの組織構造

Fugaでは、大規模AIスウォームの組織構造を考えるうえで、フレデリック・ラルーの著書『ティール組織』で示された組織発達の考え方から着想を得ています。KandaQuantumでは、AIエージェント間の協働リンク率と、事前計画の強度を軸とした独自の相図を作成しています。AIエージェント間の水平通信が増加するにつれて、
「計画された引き継ぎ」
↓
「計画された枠組み内での自律連携」
↓
「完全自律」
↓
「制御不能なカオス」
へと組織の性質が連続的に変化すると考えています。Fugaが目指すのは、すべてを中央集権的に管理することでも、すべてをAIエージェントへ自由に任せることでもありません。

基本となる指揮系統を維持しつつ、成果向上につながる部分だけAIエージェント同士の直接連携を許可する「階層+水平型」の組織構造を採用しています。
今回の実測では、1,284本の階層通信を背骨としながら、67本の水平通信を組み合わせました。

Claude・Codex・Grok・Kimiなど複数AIモデルを組み合わせて最適化
Fugaは、特定のLLMやAIベンダーだけを利用するシステムではありません。実運用ではClaude、Codex、Grok、Kimiなど複数のAIモデルを組み合わせています。それぞれのモデルには、コーディング、推論、調査、文章生成、速度、コストなど異なる特徴があります。Fugaでは、「どのタスクを、どのモデルへ、どの程度の推論リソースで割り当てるか」をオーケストレーション問題として扱います。
これにより、高性能モデルをすべての作業に投入するのではなく、タスクごとに適したモデルへ自動配分し、AIスウォーム全体の成果量とコストのバランスを最適化します。単一ベンダーへの依存を避けることも、大規模AIスウォームを安定運用するうえで重要な設計思想の一つです。
「記憶グラフ」で1,000体超のAIスウォームが経験を次のタスクへ継承

AIエージェントを大量に稼働させても、そのタスクが終了するたびに得られた知識が失われてしまえば、組織としての生産性は蓄積されません。Fugaでは、エージェントの会話、行動、成果物などをもとに「記憶グラフ」を自動生成します。記憶グラフには、過去のタスクで得られた知見や関連情報がノードとリンクとして保存されます。
次のタスクを実行するAIエージェントは、自ら必要な記憶を検索し、過去の判断や成果を新しい作業へ利用します。これにより、人間が過去の作業内容を整理してプロンプトへ再入力しなくても、AIスウォーム全体が経験を継承できる仕組みを構築しています。
量子インスパイアド最適化でAIエージェントの割当問題を定式化
AIエージェントの数やタスク数が増えるほど、「どのタスクをどのAIへ割り当てるか」という組み合わせは爆発的に増加します。Fugaでは、このオーケストレーション問題を数理最適化問題として定式化します。
具体的には、
- タスク
- AIモデル
- ベンダー
- 推論量
- コスト
- リソース制約
- 実行順序
- 依存関係
などを評価関数へ組み込み、割当の最適化を行います。この数理形式は、将来的に量子アニーリングを含む量子計算機でも扱える形式を想定しています。現在は、SA(Simulated Annealing)やSQA(Simulated Quantum Annealing)を含む古典計算機上のソルバを利用しています(*3)。KandaQuantumでは今後、AIスウォームの規模拡大によって組み合わせ数がさらに増加した際に、量子計算機や量子アニーリングが優位性を持つ領域が存在するかについても検証していきます。
なお、ここでいう「量子インスパイアド(Quantum-Inspired)」は、最適化問題を量子多体系から着想した数理モデルで扱うことを意味しており、AIエージェント間に量子もつれなどの物理現象が発生していることを意味するものではありません。
Fugaを「KAMUI」「KAMUI OS」のプロダクトとして提供
Fugaは、KandaQuantumが2025年3月に提供を開始した生成AI SaaS「KAMUI」および「KAMUI OS」のプロダクトとして提供されます。KAMUIはリリースから4カ月でARR(Annual Recurring Revenue/年間経常収益)1億円に到達しています。Fugaはまずクローズドリリースとして限定的に提供し、実運用における検証と改善を進めた後、一般公開を予定しています。
AIモデルそのものの性能競争から、「何百体、何千体というAIをどのように組織し、制御し、限られたコストの中で成果へ変えるか」というオーケストレーションの競争へ。
KandaQuantumはFugaを通じて、大規模AIスウォームを企業の研究、ソフトウェア開発、調査、設計、ドキュメント生成などの実務へ導入するための基盤構築を進めます。
注記
(*1) 人月換算について
分子(1日で何ができたか) 2026年8月20日にmainへ入った1,372コミットのうち、224件は成果のスナップショット保存や資産の自動復元といったFuga内部の機械操作です。残る1,148件が実作業のコミットで、うち70件は衝突を解消したうえでのマージにあたります。この1,148件が変更した中身を種類別に分けると、ソースコード 39,585行(製品12,736行+テスト26,849行・285ファイル)と、調査メモ・要件定義書などのドキュメント 23,828行でした。コードと文書は別々に積まれたものではなく、同じコミット群の中身を分類したものです。
換算1: 変更行数から 開発者1人が1日に残す正味のコードは、設計・レビュー・テスト・手戻り込みで数十行〜数百行とされます。1人日150〜300行と置くと—— コード: 39,585行 ÷ 150〜300行/人日 ÷ 20営業日 = 約6.6〜13.2人月 文書: 23,828行 ÷ 500〜1,500行/人日 ÷ 20営業日 = 約0.8〜2.4人月 合計 約7.4〜15.6人月
換算2: コミット数から Fugaはワーカーへ「1機能・1修正ごとにコミットし、まとめて最後に1回は禁止」と指示しているため、1コミットの粒度が細かくなります。同一リポジトリでの1コミットあたりコード変更ファイル数はFuga 2.16、人手 4.02で約1.9倍細かい。人手の粒度に揃え、1人日2〜4コミットと置くと—— 1,148件 ÷ 1.9 = 約604コミット相当 ÷ 2〜4コミット/人日 ÷ 20営業日 = 約7.6〜15.1人月
結論 行数から数えても、コミット数から数えても約8〜15人月の範囲に収まりました。1人のエンジニアのおよそ1年分にあたります。1人日あたりの生産量は当社が公開データを参考に置いた仮定値であり、業界統計の直接引用ではありません。
(*2) 「エージェント1体」の定義
本リリースにおける「エージェント1体」は、 Fugaから独立した実行単位として起動され、固有のコンテキストとタスクを与えられたLLM(大規模言語モデル)エージェント・インスタンス を指します。同一エージェントのメッセージ数やツール利用数を複数体として数えるものではありません。「1,285体」は2026年8月20日に 最上位オーケストレーターが同時に並列管理した11タスク分の集計 です(同日は逐次実行分を含め26タスクを実行しており、全体では1,551体)。ワークフローの段実行単位を1体として計上した分を含みます。
(*3) 「量子インスパイアド」について
ここでいう「量子インスパイアド(Quantum-Inspired)」は、最適化問題の記述形式に量子多体系に着想した数理を用いることを指し、量子もつれ等の物理現象がAIエージェント間に発生していることを意味するものではありません。
株式会社KandaQuantumについて
株式会社KandaQuantumは、AIスウォーム、量子最適化、生成AIを中心に研究開発を行うテクノロジー企業です。大規模なAIエージェント群を安全かつ効率的に制御するオーケストレーション技術や、量子・量子インスパイアド最適化技術の社会実装に取り組んでいます。生成AI SaaS「KAMUI」「KAMUI OS」をはじめ、AIエージェントを個体ではなく「群れ」として運用するための技術基盤を開発しています。
記事要約(Summary)
株式会社KandaQuantumは、量子インスパイアド・オーケストレーター「Fuga」のクローズドリリースを開始しました。2026年8月20日の実運用では、単一の最上位オーケストレーターが4階層・1,285体のAIエージェントを並列管理し、1,401本の通信と1,372コミットを記録しました。実作業としては39,585行のコードと23,828行のドキュメントを生成し、人間のエンジニアによる作業量に換算して約8〜15人月、約1年分に相当すると試算しています。また、1タスクあたりのAIエージェント数はFuga導入前の平均3.4体から72.3体へ拡大し、最大409体が一つのタスクへ投入されました。Fugaでは、エージェント同士の通信を事前に計画し、階層型の指揮系統と限定的な水平通信を組み合わせることで、1,000体を超えるAIスウォームの制御を実現します。Claude、Codex、Grok、Kimiなど複数のAIモデルをタスクごとに割り当て、記憶グラフによる知識継承と、量子インスパイアドな数理最適化を組み合わせることで、大規模AIスウォームにおける「成果量・制御性・コスト」の同時最適化を目指します。
Fugaは今後、「KAMUI」「KAMUI OS」のプロダクトとして段階的に提供範囲を拡大し、AIエージェントを数十体から数千体へスケールさせる新たなAIオーケストレーション基盤として一般公開を目指します。
■プレスリリース配信元-株式会社Kanda Quantum























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