
日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-B漁業)
漁業(ぎょぎょう、Fishery)は、水産物を採取する産業で、海洋や内水面(湖、川など)から魚介類やその他の水産物を捕獲・養殖することを主な活動としています。この業種は、人々の食料供給に貢献するとともに、経済や文化にも重要な役割を果たします。漁業は、商業的規模で行われることが一般的であり、漁業資源の持続可能な管理が求められています。
1. 漁業の主な分類
漁業は、大きく以下の2つのカテゴリに分けられます。
(1) 捕漁業(漁獲業)
- 海洋漁業:海での漁業活動を指します。商業的に行われることが多く、漁船を使って広範囲にわたって漁獲を行います。例えば、沖合漁業や遠洋漁業などがあります。魚や貝、海藻などさまざまな水産物を捕獲します。
- 沖合漁業:海岸から近い水域で行われる漁業。小型の漁船を用いることが多いです。
- 遠洋漁業:広大な海域で行われる漁業で、長期間にわたって漁を行うため、大型の漁船が使用されます。
- 内水面漁業:湖や川、池などの淡水域で行う漁業。淡水魚(例えば、鯉、鰻、鮎など)の捕獲が中心です。
(2) 養殖業(水産養殖業)
- 養殖業は、自然の環境で捕獲するのではなく、人為的に水産物を育てる業種です。海洋や河川、湖などで、魚や貝、海藻などの養殖を行います。養殖業は、漁獲量を安定させ、持続可能な形で水産物を供給するために重要な役割を果たしています。
- 海上養殖:海の中で魚や貝類を育てる養殖方法で、海面に網を張って魚を養殖することが多いです。養殖される代表的な水産物は、サーモンやタイ、ヒラメなどです。
- 淡水養殖:湖や川で魚を育てる方法で、例えば、鯉やうなぎ、エビなどが養殖されます。
2. 漁業の主な活動
漁業の主な活動には、以下のようなものがあります。
(1) 漁獲活動
- 漁業の中で最も基本的な活動は、魚や海産物を捕ることです。漁獲活動は、漁船を使った大規模なものから、小さな網を使った伝統的な漁法までさまざまな方法があります。
- 漁具の使用:網や釣り竿、トラップ(かご)など、漁具を使って水産物を捕える方法です。漁具には地域や対象となる魚種に応じた様々な種類があります。
- 漁法の選択:漁法には、定置網や流し網、巻き網など多様な方法があり、捕獲する水産物の種類や地域によって選ばれます。
(2) 養殖活動
- 養殖業は、育てる水産物を選び、その生育環境を整えることが重要です。適切な養殖場所を選び、食料を与え、病気を予防するための管理を行います。
- 餌の供給:養殖された魚や貝類には、適切な餌を与えて成長を促進します。
- 病気対策:水質管理や予防接種など、病気を防ぐための管理が行われます。
(3) 水産物の処理・加工
- 漁獲した水産物は、販売のために処理・加工されることが一般的です。魚を切り身にしたり、冷凍保存したり、缶詰にしたりする加工が行われます。
- 加工は、消費者に直接提供されるため、品質管理や衛生管理が非常に重要です。
(4) 資源管理
- 漁業には、持続可能な漁業を実現するために資源の管理が欠かせません。過剰漁獲や環境破壊を防ぐために、漁獲量の規制や禁漁期間の設定、漁業区域の管理が行われています。
- 漁業資源の回復や維持を目指した取り組みとして、漁業者が協力し、自然環境に配慮した漁業を実践することが求められています。
3. 漁業の経済的・社会的役割
漁業は、単なる食料供給だけでなく、経済や社会にも重要な役割を果たしています。
(1) 食料供給
- 漁業は、人々に豊富で栄養価の高い食材を提供しています。魚介類は、たんぱく質や脂肪酸など、健康に必要な栄養素を多く含んでおり、世界中で広く消費されています。
(2) 経済活動
- 漁業は、多くの国にとって重要な経済活動です。漁獲された水産物は、国内消費だけでなく、輸出品としても流通しています。漁業関連の産業(加工業、流通業、輸送業など)も発展しており、多くの雇用を生み出しています。
- さらに、観光業と連携する漁業も増えており、漁業体験や漁船クルーズなど、観光客向けのサービスも提供されています。
(3) 文化的・社会的側面
- 漁業は多くの地域で伝統的な産業と深く結びついており、その地域の文化や生活様式に大きな影響を与えています。また、漁業はコミュニティのつながりを強める役割も果たしています。
- 漁師の祭りや行事、漁業にまつわる民俗芸能など、漁業を基盤にした文化的な活動が各地で行われています。
4. 漁業の課題
漁業にはいくつかの課題が存在します。
(1) 資源の枯渇
- 過剰漁獲や環境の悪化により、漁業資源が枯渇してしまうことが懸念されています。これを防ぐためには、資源管理を徹底し、持続可能な漁業を目指す必要があります。
(2) 気候変動
- 気候変動が漁業に与える影響も大きな課題です。海水温の上昇や海洋酸性化などが、漁業資源に影響を与える可能性があり、これに適応するための対策が求められています。
(3) 環境保護
- 漁業活動が海洋環境に与える影響を最小限に抑えるために、持続可能な漁法や環境保護活動が必要です。乱獲や海洋汚染などの問題を解決するために、国際的な協力や規制が重要です。
漁業は、食料供給や経済活動、文化的な側面など、非常に多岐にわたる役割を持つ業種です。その持続可能性を確保するためには、資源管理や環境保護、技術革新が求められます。