静岡県富士宮市で10月21日に運転開始
廃液ゼロの資源循環システムでバイオガス発電と堆肥化を実現
株式会社鴻池組を中心とする6社が共同出資し、静岡県富士宮市で建設を進めてきた「富士山バイオマス乾式メタン発酵プラント」が、2026年10月21日に運転を開始しました。 同日には運開式が開催され、富士山麓における新たな再生可能エネルギー事業が本格的に始動しました。本施設では、日本初となる「バッチ式乾式メタン発酵方式」を採用しています。主に酪農業から発生する乳牛ふんを微生物の働きで発酵させ、バイオガスを生成する仕組みです。発酵過程で発生する残渣は堆肥として再利用され、地域内でエネルギーと有機資源を循環させます。
また、従来の湿式メタン発酵方式とは異なり、前処理設備や排水処理設備を必要としない構造が特徴です。廃液を外部へ排出しない資源循環システムにより、環境負荷の低減と運転管理の効率化を目指します。
本プロジェクトには、鴻池組、静岡ガス&パワー、クラフティア、ビーエイブル、富士バイオテック、KSバイオマスエナジーの6社が参画しています。
富士山バイオマス乾式メタン発酵プラントの施設概要
新施設は、静岡県富士宮市の朝霧高原エリアに位置する富士バイオテック株式会社の敷地内に建設されました。ドイツのBEKON社が開発したバッチ式乾式メタン発酵技術を導入し、5槽の発酵槽を備えています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名称 | 富士山バイオマス乾式メタン発酵プラント |
| 所在地 | 静岡県富士宮市根原字宝山 |
| 設置場所 | 富士バイオテック株式会社 敷地内 |
| 運転開始日 | 2026年10月21日 |
| 発酵方式 | バッチ式乾式メタン発酵方式 |
| 導入技術 | ドイツBEKON社製 |
| 発酵槽 | 5槽 |
| 主な処理原料 | 乳牛ふん |
| バイオガス製造事業者 | 朝霧バイオガス合同会社 |
| バイオガス発電・FIT売電事業者 | 朝霧バイオパワー合同会社 |
| 開発・運営 | 株式会社鴻池組 |
施設では、乳牛ふんなどを発酵させて発生するバイオガスを発電用燃料として利用します。発電した電力は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を活用して売電する計画です。さらに、発酵後の残渣を堆肥化することで、畜産資源をエネルギーと農業資材の双方に有効活用します。
日本初の「バッチ式乾式メタン発酵方式」とは?

乳牛ふんを約3週間かけて発酵し、バイオガスを生成
今回導入されたバッチ式乾式メタン発酵方式は、比較的水分の少ない有機性原料を発酵槽に投入し、密閉した状態で微生物による嫌気性発酵を進める技術です。一般的な湿式メタン発酵方式では、原料を液状にして混合・攪拌する工程が必要となります。一方、乾式方式では原料を発酵槽に充填した状態で処理できるため、機械的な攪拌作業を必要としません。
本施設で採用した方式の主な工程は以下のとおりです。
- 乳牛ふんなどの原料を発酵槽へ投入
含水率が比較的低い有機性原料を発酵槽に充填します。 - 発酵槽を密閉して無酸素状態を形成
微生物による嫌気性発酵が進む環境を整えます。 - 消化液を循環させながら発酵
発酵槽上部から消化液を間欠的に散布し、原料内部へ浸透させます。 - 約3週間かけてバイオガスを生成
微生物の働きによって有機物を分解し、メタンを含むバイオガスを発生させます。 - 発酵残渣を堆肥として再利用
発酵後の残渣を既存の堆肥製造工程で処理し、農業資源として活用します。
ドイツBEKON社製のバッチ式乾式メタン発酵設備の導入は、事業者側の調査によると国内初の事例です。
※日本初の表記は、2024年9月にドイツBEKON社へ確認した事業者調査に基づきます。
廃液ゼロを実現する乾式メタン発酵技術の3つの特徴
1. 前処理・排水処理設備が不要で環境負荷を低減
本施設の大きな特徴は、前処理設備や排水処理設備を必要としないシンプルな設備構成です。従来の湿式メタン発酵では、原料の調整や消化液の取り扱いに関連する設備が必要となる場合があります。一方、今回の乾式方式は、発酵に利用する消化液をシステム内部で循環させることで、外部への廃液排出を発生させない設計を採用しています。これにより、排水処理に伴う設備負担を抑え、環境負荷の小さい施設運営を実現します。
2. 機械的な攪拌が不要で運転管理を効率化
乾式メタン発酵方式では、発酵槽に投入した原料を機械的に攪拌したり、切り返したりする工程が不要です。発酵槽上部から消化液を散布する仕組みにより、原料内部への水分供給と発酵を促進します。攪拌用の動力が不要になるため、設備構成の簡素化や運転管理の負担軽減が期待されます。
3. 既存の堆肥製造設備を活用できる
発酵処理後の残渣は、既存の堆肥製造工程を経て堆肥化されます。新たに大規模な堆肥化設備を整備することなく、既存の農業関連インフラと組み合わせやすい点も特徴です。畜産業が盛んな地域において、家畜ふん尿の適正処理と再生可能エネルギーの生産を両立する事業モデルとして注目されます。
乳牛ふんから電力と堆肥を生み出す地域循環型モデル
バイオガス発電とFIT制度を活用
富士山バイオマス乾式メタン発酵プラントでは、乳牛ふんなどの有機性資源からバイオガスを生成し、熱電併給装置(CHP)の燃料として利用します。CHPは、燃料から電力と熱を同時に取り出す設備です。発電した電力はFIT制度による売電に活用されます。バイオマス由来のバイオガスは、化石燃料への依存度を低減する再生可能エネルギーとして期待されています。また、バイオマスを燃焼した際に排出されるCO2は、原料となる生物資源が成長過程で大気から吸収した炭素に由来するため、一定の条件下ではカーボンニュートラルとして扱われます。
ただし、原料の収集・輸送や設備運転などに伴う温室効果ガス排出まで自動的にゼロになるわけではありません。今回の取り組みは、畜産資源のエネルギー利用と堆肥化を組み合わせ、地域全体での資源循環を促進するものです。
家畜ふん尿の適正処理と地域の脱炭素化に貢献
畜産業から発生する家畜ふん尿の適正処理は、酪農地域における重要な課題の一つです。家畜ふん尿は、廃棄物処理法において畜産農業に係るものが産業廃棄物に区分され、適切な処理や再生利用が求められています。環境省の「平成28年度産業廃棄物排出・処理状況調査」によると、動物のふん尿の再生利用率は94.9%に達しています。家畜ふん尿は従来から堆肥などに活用されてきましたが、メタン発酵を組み合わせることで、堆肥化に加えてエネルギー資源としても利用できます。
特に、酪農業が盛んな富士宮市の朝霧高原エリアでは、地域の畜産資源を地域内で循環させる仕組みとして、持続可能な農業や地域の脱炭素化への貢献が期待されます。
鴻池組や静岡ガス&パワーなど6社が共同参画
本プロジェクトは、建設、エネルギー、設備、バイオマス関連企業による共同出資事業として推進されてきました。参画企業は以下の6社です。
- 株式会社鴻池組
- 静岡ガス&パワー株式会社
- 株式会社クラフティア
- 株式会社ビーエイブル
- 富士バイオテック株式会社
- 株式会社KSバイオマスエナジー
プラントの開発・運営は鴻池組が担当し、バイオガス製造事業は朝霧バイオガス合同会社、発電およびFIT売電事業は朝霧バイオパワー合同会社が担います。複数企業がそれぞれの専門技術と事業ノウハウを持ち寄り、再生可能エネルギーの導入と地域資源の有効活用を進める体制です。今回の事業は、今後ほかの畜産地域で同様のシステムを導入する際の参考事例となる可能性があります。
参考資料・出典
- 富士山バイオマス乾式メタン発酵プラント運転開始に関する発表資料(2026年10月21日)
- 環境省「平成28年度産業廃棄物排出・処理状況調査」
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 第2条第10号
- 経済産業省 資源エネルギー庁「FIT・FIP制度ガイドブック2026年度版」
- ドイツBEKON社の設備に関する事業者調査(2024年9月確認)
記事要約(Summary)
2026年10月21日に運転を開始した「富士山バイオマス乾式メタン発酵プラント」は、日本初とされるバッチ式乾式メタン発酵技術を採用した、地域資源循環型のバイオガス発電施設です。ドイツBEKON社製の発酵設備を導入し、乳牛ふんなどを原料にバイオガスを生成するほか、発酵残渣を堆肥として再利用します。前処理設備や排水処理設備が不要で、攪拌用動力も必要としない設備構成は、環境負荷の低減と運転管理の効率化を両立する新たな選択肢となります。鴻池組を中心とした6社の連携によって実現した本事業は、家畜ふん尿の適正処理、再生可能エネルギーの活用、農業資源の循環を組み合わせた取り組みです。
富士山麓で始まった新たなバイオマスエネルギー事業が、今後の地域脱炭素化や持続可能な畜産業の発展にどのように貢献していくのか、注目されます。
■企業ニュース対象-株式会社クラフティア

























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